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モーイ親方が、小さいころの話。隣の家の蜜柑の木が、モーイの家の庭に下がって、実がたくさん成っておったってよ。おいしそうな蜜柑だから、モーイは、自分の家に垂れ下がって成っているのばかり、手伸ばしては、もぎって食べておったって。
それを見た隣の家の人が、
「どうして、お前は、人の蜜柑を取って食べるか。」
と言うから、モーイは、
「これは、私の家の屋敷に入っている実だから、私が食べているんです。」
「だけど、お前、根元はどこにあるか。こっちだよ。私のところだよ。」
と、そのときは、とってもひどく叱られておったそうだよ。そのときは、
「そうですかね。」
と言って、モーイも我慢したそうだ。
それから、四、五日はたったかねえ、今度は、モーイが死んでいる猫を捜して来て、それを長い竿の先にくくって下げて、自分の家の庭から、隣の家の玄関口に突き出したからよ、もうすごく腐れておるんだからさ、蝿がブーブーしていたそうだ。
それを隣の人が見て、
「お前は、何をするんだ。人の家の入口に、こんな腐り猫をぶら下げて。」
と言って、それを取ろうとしたら、モーイが、
「どうして取るんですか。あんた、その元は、どこにありますか。元は、私の方にありますよ。」
と言って、それでも、隣の主人がその猫を取ろうとすると、
「この前、あんたは、蜜柑の根元は、こっちにあるのにどうして食べたかって言ったさあ。」
と言ったから、そう言われて、隣の主人は、
「いやいや、そんなら、今から、お前の方に下がっている実は、取って食べなさい。もう今からは、取って食べていいよ。」
と言ったそうだ。だから、それからはね、モーイは、隣の家の蜜柑をもぎって食べたという話だよ。
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