大正の五、六年の頃に、ちょうどまき畑という所を開けているとき、そこで海に漁をしてきて、食事をしようとしているとき、痩せほそって弱っている猫がやって来た。「あい、可哀そうにお前は命を失ないそうしているのか。」と言って、魚を焼いて食べていたものを折ってくれてやると、食べてから、また翌日も来るのだが、これはもう太ってきているので、また翌日もそうしてくれていると、この猫が七日ともなると、おおよそ中くらいの犬の大きさまでも育っているので、「あれ、これは不思議なものだ。」と思ってみていると、この猫は必らず人間がするように、こうして束になった火にたいまつを枕のかわりにして寝ているそうだ。「これはもうただの猫ではなさそうだ。」と思っていた。この人は毎日海に行って、漁をする人で海に行っていると、ちょうどある日海に行って、五尺ばかりの木が流れ着いていたから、それを取り、浜の上に乗せて置いてから、そこに魚をかついで来て置いてから、今度はその猫に言ってやったそうだ。「もうね、お前はただの猫だと思って、お前には物もくれて、私は養っていたが、お前はただの猫ではないから、お前と私と命を賭けた勝負だから、今日は私も覚悟している。お前も覚悟しておけよ。」と言いながら、その二つに割った木を振りおろして、頭を打ちつけたそうだ。打ちつけるとこの猫はもう人間の何倍くらい飛び上ったのかも分からないほど上って、下りてくる時に、つかみかかろうとするそうだ。この人はまわりこんで、またその猫に横の方から打ちつけ、打ちつけして、夢中でこの猫が弱りきるまで打ちつづけていると、後はもう頭は打たれて切れ切れになっていたそうだ。それでこの猫は縛って、この時はもう畑にさえ、イモは持って来てあったそうだが、心臓はふるえて止まらないので、網をなって縛りつけ持っていってアダン木に縛ってつるしておいて帰ってきたそうだ。普通の猫だったら、それは腐れるはずだが、けれども二、三ケ月過ぎてもこの猫はからからに乾くまでも腐れなかったそうだから、化物であったということがわかったそうだ。 |