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化け猫と戦った犬

あの前フスバラ家の先祖が、ある晩漁に行く途中、大きな猫が五、六匹、大きな眼を照りかがやかして、このおじさんにとびかかったので、びっくりして頭は急に大きくなり、身体中鳥肌が立った。「これは困った。どうして命びろいしようか。」と肝をつぶして、脳天をつかれる思いで立っていると、そばからまたカサ、コソと出てくるので、「これはまた。」とびっくりして見ると、それは不思議、自分の飼っている犬だ。「さあ、犬よやっつけてやれ。やれやれっ。」とはやしたて、猫どもとたたかわせて、自分は、そのすきに、松明を横にかついだままで、家に飛んで帰って、家の中にとびこんだところ、戸口が三尺しかなくせまいところだので、そこにひっかかって、もがいても入れんので、「ほうら、猫のやつここまで来たか。」と度胆を抜かして、「エイヤ、エイヤ。」と松明を束ねた縄を引き切ってしまい、「ああ、今晩は一体、どうしたことだ。」とこぼしながら、やや気を落ち付けているところに、飼い犬が眼を抜かれてしまい、ようやく家まで鼻を頼りに帰って来たので、餌をやってねぎらおうとしたけど、根負して死んでしまったので、可哀そうだと自分の庭の岩の下に葬むったという話です。

備考:
1.前フスバラ‥‥多良間村塩川字吉川部落故伊舎堂常展氏の家号。
2.松明(たい)‥‥昔は、長いすすきを一尺周りに縛って、これをいざりの時は、七、八本も用意した、横に背負って道路せましと歩いた。
3.岩‥‥伊舎堂さん宅の庭に最近まであった由。
民話タイトル: 化け猫と戦った犬 カテゴリー: 神話と伝説
収録地: 多良間村塩川 聴取年月日:  
話者: 男性 話者生年月日: 明治41年
出版情報
本タイトル: 多良間村の民話
出版年: 1981・昭和56年3月


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