あの前フスバラ家の先祖が、ある晩漁に行く途中、大きな猫が五、六匹、大きな眼を照りかがやかして、このおじさんにとびかかったので、びっくりして頭は急に大きくなり、身体中鳥肌が立った。「これは困った。どうして命びろいしようか。」と肝をつぶして、脳天をつかれる思いで立っていると、そばからまたカサ、コソと出てくるので、「これはまた。」とびっくりして見ると、それは不思議、自分の飼っている犬だ。「さあ、犬よやっつけてやれ。やれやれっ。」とはやしたて、猫どもとたたかわせて、自分は、そのすきに、松明を横にかついだままで、家に飛んで帰って、家の中にとびこんだところ、戸口が三尺しかなくせまいところだので、そこにひっかかって、もがいても入れんので、「ほうら、猫のやつここまで来たか。」と度胆を抜かして、「エイヤ、エイヤ。」と松明を束ねた縄を引き切ってしまい、「ああ、今晩は一体、どうしたことだ。」とこぼしながら、やや気を落ち付けているところに、飼い犬が眼を抜かれてしまい、ようやく家まで鼻を頼りに帰って来たので、餌をやってねぎらおうとしたけど、根負して死んでしまったので、可哀そうだと自分の庭の岩の下に葬むったという話です。 |