古猫の話。昔、猫は十年以上養ってはいけないという話だが、昔あるところに、小さい時分から大変可愛がっている猫を養っている家庭があったそうだ。それでその猫は小さい時から養っているので、子供が二、三人も生まれている親達なんだが、近頃どうも様子がおかしい。畑に行って帰ってくると、子供達も誰もいないのに、あれもこれも煮た物から煮てない物まで無くなったりすると気がついたので、よし、これは誰がやるのか見届けてやろうと思い、一度畑には出ていって、その女主人は夫に、「あなたはそこで畑仕事をしてなさい。私は行って見てくる。盗人が来るのか何が入るのか、近頃物が無くなってしまう。」と言って家に帰っていき、静かに台所の側に忍び寄って、雨戸の節穴から覗いてみると、猫が小さな戸棚の戸を開けて、干し鰯などみな喰い千切っているので、ああ、それだけかなと思っていると、今度は鍋の蓋の把手に喰い付いて、後足を踏ん張りますと鍋の蓋の方は片方に寄ってしまって、開きますと、そこから中の汁をぺろぺろ食べて、足で掻き開けて、中に入っている中身も取って喰っている。そして、喰った後は、鍋の蓋も閉めて戸棚も閉めて、口のまわりも舌で拭いてから、知らん顔で中前の座に行き、そこで日向ぼっこをして寝ころんでいます。 すると、こやつがやっていたのだな、昔から猫は十年以上養うものではない、最後は主人の命を取るという話だが、私達の猫もそうなのだろうか、今度はまず試しにと、子供を昼寝させる時は、わざと猫の側に筵を敷いて寝かし、上には着物を被せて、蚊にも蠅にも噛まさんようにして寝かせて、しばらくその猫の様子を見ていると、その猫はその子供の側に行ってからに、手も足も延ばして子供の側に並び、もう一回延ばしてその子供よりも少し長くなりますと、背伸びをするふりをして飛び出していって、庭の後ろの方で一生懸命になって穴を掘っていますので、ははあ、主人の命も取ろうとしているのだなと、その母親は夫に、「私達の猫はそのようにしています。」と話しますと、「その猫というのは、主人の命を取ると、自分も一緒に命が切れるというから、その子供を寝かしている時は、君の乳を手拭いに搾りだして、子供を寝かしつけている真似をして、そこに猫が来ると、しっしっと追いやって、着物に着物を被せておいて、枕の所には乳を搾りだした手拭いを置いて、上の方から着物を被せておきなさい。」と言いますので、そこに子供を寝かしてあるように見せかけておきますと、二、三日そのようにして寝かしつけてある真似をしますと、その猫は最後には、その子供の乳の香りのする所は顔だから、その下の方、喉に当たる所に噛みついたのですが、その中には着物が入っているのですから子供ではないのですが、そのまま喰わえて行って、掘ってある穴に引き込んで、「ニャーオ。」と一声叫んで後、そのまま子供と思って喰わえてきた着物の上に息絶えていたそうです。 すると今度は、古猫は主人の命を取ると、自分も死んでしまうので、その家に対して恨みを持ち、その祟りでその猫の子や孫達がまたその家にやって来ると言うので、よし、それでは見せしめのために、地中に穴を掘って埋めずに、その猫が穴を掘った側の木の枝に首を縛って下げておけば、それを見てびっくりして、その子や孫達がまた私達の家に、人の命を取りには来ない筈だからと言って、その猫の首を縛って下げて、喰わえてきた着物を取り、他の何かを入れて人が入っているようにして、土を盛り上げて作っておいたという話。その時から猫が死ぬ時は、その猫の子や孫が、また人の命を取りに来るかもしれないと思い、山の木や他の木の枝に首を縛って下げて、もし君達が人の命を取りに来たらこのようになるよと見せるために、わざと木の枝に首を縛って吊り下げておくんだってさ。 |