トウカパナの三角山には日が悪い時には、大きな山猫が出て来て、人間におそいかかることがあったらしいよ。漁に行く時も畑に行く時も、どうしてもこの道を通らなければならない場合があるさね。猫の話は村中に広がって、この道をあまり通わない方がよいという話が出たりしたそのあと、ビンキヤーのお爺さんが連れの者と一緒に、旧暦十月一日の晩、海に高いざりのため、この三角山の道を通ったらしいよ。そこで大きな猫が、道路の真中に目を電燈のように輝かして坐っているので、「この奴はやっぱり出て来やがったな。今晩こそやっつけてしまえば、この道路も安全になるだろう。」と後の方に、すすき束の松明を一ぱいかついでいた弟に、「君の担いだすすき束を半分は積み上げて燃やせ。早く炎をあげろ。」と言いつけると火は昼のように、炎をあげて燃えだした。こんな明るい時は猫の目は不自由で、はっきりは見えないそうだ。長い三又銛を振りあげてかかったところ、なんと銛の柄の上にとび乗ったそうだよ。こんな時は人間の眉毛は逆だちして、一匹の猫でも何匹かに殖えて見えるそうなので、手拭で鉢巻して、眉毛をおさえてさぁねぇ。ああ、もうたかが一匹ぐらいの猫にも散々手をやいて、やっとで殺すことが出来、このやろうを松明を結えておいた縄で縛り、近くのがじまるの大きな枝にぶらさげて、「今晩の高いざりこそ大漁だ。」と海に下りると、案の定大漁して陸に上ってくると、そのぶらさげた大猫は死体も見えない。それからというものは、三角山の通りもおそろしいこともなくなり安全に通れたそうな。その猫という奴も普通の猫でなく、魔ものであったのでしょう。ビンキヤーの爺さんは僕らが子供のころも、元気な鼻の穴の大きな爺さんがおったでしょう。あの人さ。 |