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猫と南瓜

この猫はよ、この家で二百年近く飼っていたそうだ。それで、この猫は人間よりも物を知っているわけさ。この家でも、「この猫が死ぬときにはね、りっぱな墓を造ってやれよ。」と、一代、二代、三代、そして、三代目の子供たちにそう言い伝えられていたそうだ。それくらい年とった猫だから、どんなことでも知っていたと。あるとき、囲炉裏(じ ー る)の上のガクー(鍋を吊り下げるもの)に鍋が下げてあったらしい。そしたら、この猫がガクーから鍋を下ろして、中の物を食べてあと、側に寝ていた子供たちの口のまわりに食べ残しをすりつけて、子供たちが食べたように見せたわけ。そこに、畑から親が帰ってきて、それを見て、「まさか、この子が食べれないはずだがねぇ。」と、不思議に思った。「鍋に手がとどくはずないがなぁ。」と思っていたら、次の日も次の日も食べられているもんだから、母親は子供たちを強く叱ったわけさ、五つと三つの子供をね。「あんち、がっきーさがてぃ(こんな、盗み食いして)。」と、叩いたりしてるわけさ。  それを、隣のお婆が見て、かわいそうに思ってよ、「この子たちがこんなするはずないがねぇ、ひるまはっさー(不思議だなぁ)。この親たちが畑に出たときに、行って見てみよう。」と言って、お婆が戸のガマグァー(節穴)からこの家の鍋の方を見ていたらよ、この家の猫が立って、二つの手で鍋をガクーから下ろしているわけさ。「不思議なこともあるなぁ。」と、このお婆は身動きもしないで、そこでじっと見ていたら、猫が鍋の中の物を食べて、そして、側で寝ている子供たちの口に残り物をすりつけたわけさ。それで、ここの親は猫が食べているのがわからないで、子供たちが食べたと思っているわけさ。お婆は、それを見たもんだから、「くれー言いわれっさー(これは言ってやらんといかん)。」と、その親に、「私は見たんだがね、私が見たというなよ。あの鍋の物を食べているのはね、あなた方の家の主だよ。」と言った。言ったんだが、初めは信じないわけ。それで、ことの次第を話したら、やっと信じたんだが、今度はこの猫が、お婆が言ったというのを知っていて、お婆の命をねらってきたそうだ。そして、とうとうこのお婆は猫に命を取られてしまった。  それで、その家の人たちは、どうしたものかといって、易者(しむち)の家に習いに行った。行ったら、「いったーやーに(あなた方の家に)、百年あまる主がいるねぇ。」と言って、「とぉ、あなたたちは家にいたら大変なことになるよぉ。今日か明日にでもこの主に殺されるかも知れないからね、あなた方は、海に山原船を浮けて、その船に寝泊まりしなさい。そしてよ、あなた方が船に寝泊まりしていたら、船をつないでいる綱から、夜中の三時頃にこの猫が上ってくるはずだから、そのときに道具を持って、ちゃんと構えておきなさい。そして、そのときに一回で殺さないといけないよ。」と教えてくれた。その家の人たちが、言われたとおり山原船に寝泊まりして、綱のところに、みんな刀や槍を持って、猫に見られないように隠れていた。そうしていたら、言ったとおり、夜中の三時頃、猫が綱から上がってきた。  船に上がろうとしたときに、すぐ、飛び出て行って、この猫を殺したわけさ。猫は、潮の中を流がされて、翌朝、浜に打ち上げられていたので、先祖代々の言い伝えどおり、「この猫は、家の庭に埋めんといかんなぁ。」と言って、家に持って行って庭に埋めた。そして、「この上にスブイを植えておくか。」と言って、埋めたところにスブイを植えておいた。しばらくしたら、このスブイが、さらい一ち(たった一つ)、ちゃっぴなーぬ(大きな)スブイが、たった一つだけできていたって。「はっ、ふれーひるましむんやっさー(ほぉ、これは珍しい)。床の間にでも飾っておくか。」と言って、スブイを取って、床の間に飾っていた。そして、「年が明けたら食べるか。」とおいていて、年の明けた節日(しちび)に、みんで食べようと、スブイを包丁で切ったら中から血がサーラナイサーラナイ(どんどん)出てきたという話だな。

備考:
 
民話タイトル: 猫と南瓜 カテゴリー: 本格昔話
収録地: 名護市名護字東江 聴取年月日: 1979・昭和54年2月22日
話者: 男性 話者生年月日: 明治37年
出版情報
本タイトル:  
出版年:  


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