これはよ、ある大分県の農家でね、まあ富豪であるわけさ。その家は相当な財産家なんだよ。財産がたくさんあってね、そして蔵も持ってる家だからもうこれはもう相当な大農家だったはずだ。だからこの家の話なんだが、猫をいままで三十年余り飼ってるわけだ。それで、その家の子どもたちがもう一人ひとりなくなっていったので、その家の主人は、「この猫が化けるんで、私たちの子どもたちはもう全部なくなるんだな。」と考えているわけだ。それで、この猫を殺そうとするのだが、黒猫だから、なかなかその猫は殺せないわけだ。 それで、ある夜、寝ている主人に猫が、「私は、あなたの家にそんな不幸なことをしてはいない。蔵にもう四・五十年ばかり生きている頭も二つ、体も二つある大変大きな鼠がいて、それがあなたの家を、不幸にしているのです。」と言って、主人に夢を見せているわけだ。そしたら、その主人は、「珍らしい夢だ。」と言って、もういわば、疑問に思って、「こんなこともあるのか。」と、不思議に思っているうちに、また夢を見た。また寝ていて夢を見ると、「これは私一人ではこの鼠をかたづけることはできない。私と同年の猫がどこそこにいるが、そこは何々という所なんだよ。」と、その居所までも知らせたわけだ。それで、「そういえば、これはまたかわった夢だな。」と言って、この主人も、「これにはきっとわけがあるにちがいない。」と、その猫が語ってくれた家に行ってみた。 すると、そこには案の定、もう三十年余りになる猫がいるわけだ。そこで、その家の主人に、こうこうしかじかですからと、もう道理を言ってね、こうだからと言って、「まず猫を借して下さいませんか。」と言ったら、その家の主人は、「ああ、借りなさい。」と言って、猫を借したわけだ。それでもう財産家は、猫を持ってきて、二つの猫をいっしょにした。主人が二、三日うちにはこの鼠を取るはずと思っていると、とうとう二匹の猫が鼠をくわえてきて殺したんだ。それからは、その家は何のさわりもなく幸福に暮らせたので、「この猫は人間同様の者だ。」と言って、猫墓を作って置いてあるそうだ。これは大分県にある話だ。もう終り。 |