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猫化け女房

あのね、もう昔になるんだよねえ。猫が人に化けて、もう家庭をもって、子どもも二人、姉と弟を産んだ。そして、夫は毎日畑に行くんだけど、この猫は夫が行くと、女だけど大猫になって、天井の鼠がさわいだら、すぐにもう、化けていたのが元にもどるわけね。それで、子どもが、「ねえお父さん、私たちのお母さんは、鼠がピーピーピーと泣いたら、鼠を取って食べるといって猫になるよ。本当だよ。」とこの子がいうので、そのお父さんは、「まさか。」と思って、「ばかたれ、ばかなことをいって。」といった。  妻は毎日、また仕事もしないで、布ばかりおっていたらしいとか。機からおりて、鼠を取ってどうしようもないというので、「本当かなあ。もうこの子がああいうので。」といって、畑に行くふりをして隠れていた。すると、何時頃元にもどったといったのか、案の定大猫になって、鼠を取って緒ーウーとしたので、「もう大変だ。私は猫と夫婦だったんだね。」と言って、その時から驚いて、畑に行ってきて、また夕飯も食べてから、一息ついて、「おまえは、もう子どもを二人産む間、おまえの親に会ってないでしょう。その子どもたちもそうだから、親に会いに行ってこようね、おまえの親たちは何を召しあがるのか。」というと、「私たちの親は魚を召しあがります。ほかは何も召しあがりませんよ。」といった、すると「やっぱり、そうか、猫だなあ。」と思って、隣の物知(むぬし)りお爺の所へ走って行って聞いてみると、このお爺が、「もう魚は多く買わせて、お膳に入れてかつがせて、そしてそれを先にしなさい。おまえは十五間ばかり後になって、風上から行かないで、風下からおまえは歩きなさいよ。」と、隣りの物知りが教えた。子どもたちは、どうしても二人連れて行くというが、「ああ一人はもう歩けないから、おまえたちの家は遠いのか。」と聞くと、「大変遠い。」といったんだって。それで、それならと子どもは隣りにあずけて、自分は下の子をおんぶして、妻はいつも十五間ばかり先にして、かつがせて行かせた。  すると案の定、山奥の洞窟が親の家になっているわけね。そうすると、洞窟の入り口に行って、この御馳走の魚をおろした。するともう猫になって、「マーウーウー。」というと、夫婦、親猫たちが、「おまえはね、もう人間(しーじゃ)〈昔は人にしじゃといったそうだよ〉に殺されて、もういなくなったと思っていたのに。おまえはもう元気だったんだねえ。」といって、二ひきのうすよごれた猫が出てきた。そして、それをなめまわすと、「私は、まだまだ殺されていないよ。人間と二人子どもも産んでいるよ。」といってね、「おまえ、それでも人間は物知りだから、もう帰らないで、おまえも私と子どもたちとここにいなさいね。」というと、「いいえ、私は人間たち、子どもたちも連れてくるよ。もう魂を取って来るよ。」といったんだって。「そんなことはするな。人間は物知りだから、おまえはもう呪文で亡くなるだけだ。『我如古(がにく)ナガサチン、青鳴(うーな)ち猫(まやー)、青鳴(うーな)ちすなよー〈我如古ナガサチン 青鳴き猫よ 青鳴きするなよ〉 北風(にしかじ)ヌ吹(ふ)ちねー、南(へー)んかいたいはてぃてぃ〈北風が吹けば 南に向かって死になさい〉 南(へー)ぬ風(かじ)ぬ吹(ふ)ちーねー、北(にし)んかいたいはてぃりよー〈南の風が吹けば 北に向かって死になさいよ〉』といって、それを一息で三回くり返したらね、おまえは北枕で死ぬからね、人間は物知りだから行くなよ。」と、親たちが行かせないというと、「いいえ、夜には行って取ってくる。」といったんだって。  それで、夫は風下でその話を聞いて、もうすぐいちもくさんに家まで走って行って、家は猫が入らないように、みんなこうして釘を打って家に入れないようにした。猫が入れないようにくくって、家のまん中に、子どもを二人連れて行って座らせた。この猫は、もうまたとてもいやな泣き方をして入ってきたかとか。家のまん中に入ってくるとすぐ、それを三回くり返すともう泣かなくなった。夜が明けてきたので見ると、北枕をして死んでいたんだって。お母さんは亡くなってしまって、それは人間を子どもを産んだからといって、また人間と同じように葬ったという、その話は聞いたよ。

備考:
1.物知(むぬし)り‥‥三世相(さんじんそー)と呼ばれる易者などをいう。
民話タイトル: 猫化け女房 カテゴリー: 本格昔話
収録地: 東風平町上田原 聴取年月日: 1982・昭和57年9月22日
話者: 女性 話者生年月日: 大正4年
出版情報
本タイトル: 『こちんだの民話』(昔話編)
出版年: 1984・昭和59年9月


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