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猫檀家

昔々ね、あるところに、立派なお寺があって、オンガン長老という和尚さんが住んでいたそうです。和尚さんは、猫が好きで、年とった大きな猫といっしょに暮らしておったそうですよ。 昔は、人が死ぬと和尚さんがね、お経をあげる習わしだったので、この和尚さんも葬式のときには、お経をあげながら墓までついて行ったそうです。ところがね、お葬式のとき、不思議なことに和尚さんが、一生懸命お経を読んでいるのに、いつのまにかにね、龕の中に入っている死んだ人は、お墓に着くころになると、いつもなにかに食われて、骨だけになっていたそうです。村の人も不思議に思っていたし、「ふたも閉めているのに、どこから入るんだろうか、何者だろうか、不思議なことだね。」と和尚さんは、いつも考えていたって。  ある日、和尚さんの家のお婆さんが死んだって。その晩に、猫を抱いて、「日も暮れた、暗くなってしまった。お葬式は明日にしようか。」と和尚さんが、独り言を言ってね、お婆さんの前に座っておりました。その晩、和尚さんが猫といっしょに夕御飯を食べていると、「ミャーウ、ミャーウ、おうい、出てこいよう。」と垣根のほうで和尚さんの猫をさそう声がしたって。猫が外へとび出ると、しばらくしてもどってきたから、「どうしたんだ。」と和尚さんが聞くと、猫は、「なんでもありません。明日は葬式があるから、いっしょに食べに行こうよ、とお友だちがさそいにきたけど、明日のお葬式は、私の家のお婆さんの葬式だからだめだよと断ってきたよ。」と答えたそうです。それを聞いて、「そうか。こいつらだった。」と和尚さんは、やっと死んだ人が棺の中で、骨ばかりになってしまうわけがわかったって。「でも、ちゃんとふたがしてあるじゃないか、お前たちはどうして中に入れるんだ。」と和尚さんが聞くとね、大きな猫は、「村を出るまではだめさ。」というから、「どこで、はいるのか。」と聞いたら、「村はずれで棺桶に雲がかかって暗くなったときにさっと中に入って、そのあともう一度雲がかかったときに飛び出るのさ。」和尚さんは、「そんなら、どうしたら、入られないか。」と聞いたら、「雲がかかったときナギナタで棺桶を叩かれるとお婆さんは食われずにすむだろうさ。」と教えてくれたって。  それで、次の日には、和尚さんはナギナタを持ってお経をあげながらお婆さんについて行ったそうです。そしたら、猫が教えたとおりに、村はずれまで来たら、雲がかかって、暗くなったので急いでナギナタでカパラと棺桶を叩いたって。お葬式に来た人たちは、「変わった葬式だ。和尚さんは怒っているのかね。」とあっけにとられていたそうで、しばらくするとあたりがまっ暗になったので、和尚さんはもう一度、カパラと棺おけを叩いたそうです。そして、お葬式の人たちがお墓に着くと、「お墓に入れるまえに、棺桶の中を調べなさい。」とみんなに言ったので、棺桶のふたを開けてみると、中には大きな猫が三匹死んでおったって。それで、お婆さんの身体はなんにも食べられずに、きれいに残っておったそうです。それから、魔除けとしてお葬式のときには、旗を立てたりするようにてったそうです。

備考:
 
民話タイトル: 猫檀家 カテゴリー: 本格昔話
収録地: 伊良部町佐和田 聴取年月日: 1976・昭和51年3月26日
話者: 女性 話者生年月日: 明治33年
出版情報
本タイトル: いらぶの民話
出版年: 1989・平成元年9月


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